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アメリカの国立公園カメラの見どころ
アメリカ国立公園局のカメラは27台。観光案内のカメラだと思って開くと、 やたら地味な方角を向いていて拍子抜けすることがあります。 それには理由があって、多くは景色を見せるためではなく、空気を見るために置かれています。

あのカメラは、空気の透明度を測っている
アメリカの国立公園には、大気の状態を監視する仕組みがあります。 遠くの山がどれだけはっきり見えるか ―― 専門的には視程といいます ―― を継続して記録することで、大気の汚れ具合の変化を追うのです。
そのための道具として、決まった方角の決まった景色を、決まった間隔で撮り続けるカメラが置かれました。 同じ構図の写真が何年ぶんも並べば、「10年前は見えていた尾根が、いまは霞んで見えない」 といった変化が一目で分かります。
だから構図が動きません。ズームもしないし、絵になる方向へ振ることもない。 観光客が撮る写真とは目的がまるで違うので、 「なぜここでこの方角なのか」と思う画角のほうがむしろ正常です。 そう分かって見ると、遠くの稜線がくっきり見える日にちょっと嬉しくなります。
山を見るカメラ
- ヨセミテ国立公園(カリフォルニア)— 氷河が削った花崗岩の谷です。エルキャピタンやハーフドームの巨大な一枚岩が並び、 日が傾くと岩肌に濃い影が走ります。太陽の角度で表情が変わるので、 現地の朝と夕方で見比べる価値があります。
- マウントレーニア国立公園(ワシントン)— 氷河をまとった巨大な火山。ただし山頂が見える日が少ないことで有名で、 雲の中に隠れていることのほうが多い。晴れて全身が出ている日は当たりです。
- デナリ国立公園(アラスカ)— 北米最高峰を抱える公園です。こちらも山頂が雲に隠れがちで、 現地でも「山を見られた人は運がいい」と言われる部類に入ります。 夏は夜がほとんど来ませんが、冬は逆に昼がごく短くなります。
- ロッキーマウンテン国立公園(コロラド)— 標高3,000mを超える峠道を抱える山岳公園。真夏でも稜線に雪が残り、 午後になると雷雲が湧きやすい土地です。
- グレイシャー国立公園(モンタナ)— 名前のとおり氷河の公園ですが、その氷河は年々小さくなっていることで知られています。 カメラが記録し続けているのは、まさにその変化です。
水と森のカメラ
- クレーターレイク国立公園(オレゴン)— 大昔の噴火で山が崩れ、残ったくぼ地に水がたまった湖です。 流れ込む川がなく雨と雪だけで満たされているため、 水が非常に澄んでいて、独特の濃い青に見えます。冬の積雪量は全米でも指折りです。
- オリンピック国立公園(ワシントン)— 温帯雨林、海岸、氷河の山が一つの公園に同居しているという珍しい場所です。 カメラがどこを向いているかで、まったく違う土地に見えます。
- アカディア国立公園(メイン)— アメリカ本土でいちばん東にある一帯で、大西洋に面した岩の海岸が特徴です。 このサイトで最も日本との時差が小さい海外カメラでもあります。
乾いた土地のカメラ
- グランドキャニオン(アリゾナ)— 視程の観測地としてよく知られた場所です。 空気が澄んだ日には対岸の壁の細かい起伏まで見え、霞んだ日にはのっぺり平坦に見えます。 その差がはっきり出るので、大気の状態を見るには格好の被写体です。
- ジョシュアツリー国立公園(カリフォルニア)— 性質の違う2つの砂漠が接する場所で、奇妙な形の木と丸い岩が並びます。 昼と夜の気温差が大きく、日が落ちると急速に冷えます。
間欠泉と火山
オールド・フェイスフル間欠泉(ワイオミング)は、 27台の中でいちばん「当たり外れ」がはっきりしたカメラです。 この間欠泉はおよそ90分前後の間隔で噴き上がります。 間隔は一定ではありませんが、規則性があることから 「Old Faithful(律儀なやつ)」という名前がついています。

つまり開いた瞬間に噴いている確率は低く、しばらく待てば当たるカメラです。 噴き上がりは数分続くので、タブを開いたまま放っておくのが正解かもしれません。
このカメラは、このサイトに載せている国立公園局の27台の中で 唯一の動画配信です。 イエローストーンの公式ページにも、10台あるカメラのうち動画配信はここだけだと書かれています。 しかもこのカメラは公園の予算ではなく、キヤノンUSAからの寄付で維持されています。 待てば噴くカメラを動画で見せるには、それだけの費用がかかるということです。 残りは、他の機関のカメラと同じく静止画です。
ハワイ火山国立公園(ハワイ島)は、 キラウエアとマウナロアという2つの活火山を含む世界遺産の公園です。 火山活動の状況によって見えるものが変わるので、他の公園とは性質が違います。 同じ島の火山を観測目的で映しているカメラについては、 火山カメラの記事のほうに書きました。

見るなら日本時間の深夜
27台はアラスカから東海岸まで散っていて、日本との時差は13時間から19時間あります。 アメリカの89台には、このほかに火山と生きもののカメラが入っています。 まとめて明るいのは日本時間の深夜0時から4時ごろです。 日本の夜8時から10時ごろだと、西側の公園が朝を迎えたあたりになります。
なお、冬季に道路が閉鎖される公園では、カメラの保守ができずに止まることがあります。 このサイトに載せるにあたっては、画像がきちんと更新され続けているかを一台ずつ確認し、 数か月止まったままのものは外しました。それでも、季節や整備の都合で一時的に止まることはあります。
国立公園のカメラは、観光地の絶景カメラとしては期待外れかもしれません。 ただ、「これは記録のための装置だ」と思って見ると、 何でもない尾根が今日はどこまで見えているか、という見方ができるようになります。