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アメリカの国立公園カメラの見どころ
アメリカ国立公園局のカメラは12台。観光案内のカメラだと思って開くと、 やたら地味な方角を向いていて拍子抜けすることがあります。 それには理由があって、多くは景色を見せるためではなく、空気を見るために置かれています。
あのカメラは、空気の透明度を測っている
アメリカの国立公園には、大気の状態を監視する仕組みがあります。 遠くの山がどれだけはっきり見えるか ―― 専門的には視程といいます ―― を継続して記録することで、大気の汚れ具合の変化を追うのです。
そのための道具として、決まった方角の決まった景色を、決まった間隔で撮り続けるカメラが置かれました。 同じ構図の写真が何年ぶんも並べば、「10年前は見えていた尾根が、いまは霞んで見えない」 といった変化が一目で分かります。
だから構図が動きません。ズームもしないし、絵になる方向へ振ることもない。 観光客が撮る写真とは目的がまるで違うので、 「なぜここでこの方角なのか」と思う画角のほうがむしろ正常です。 そう分かって見ると、遠くの稜線がくっきり見える日にちょっと嬉しくなります。
山を見るカメラ
- ヨセミテ国立公園(カリフォルニア)— 氷河が削った花崗岩の谷です。エルキャピタンやハーフドームの巨大な一枚岩が並び、 日が傾くと岩肌に濃い影が走ります。太陽の角度で表情が変わるので、 現地の朝と夕方で見比べる価値があります。
- マウントレーニア国立公園(ワシントン)— 氷河をまとった巨大な火山。ただし山頂が見える日が少ないことで有名で、 雲の中に隠れていることのほうが多い。晴れて全身が出ている日は当たりです。
- デナリ国立公園(アラスカ)— 北米最高峰を抱える公園です。こちらも山頂が雲に隠れがちで、 現地でも「山を見られた人は運がいい」と言われる部類に入ります。 夏は夜がほとんど来ませんが、冬は逆に昼がごく短くなります。
- ロッキーマウンテン国立公園(コロラド)— 標高3,000mを超える峠道を抱える山岳公園。真夏でも稜線に雪が残り、 午後になると雷雲が湧きやすい土地です。
- グレイシャー国立公園(モンタナ)— 名前のとおり氷河の公園ですが、その氷河は年々小さくなっていることで知られています。 カメラが記録し続けているのは、まさにその変化です。
水と森のカメラ
- クレーターレイク国立公園(オレゴン)— 大昔の噴火で山が崩れ、残ったくぼ地に水がたまった湖です。 流れ込む川がなく雨と雪だけで満たされているため、 水が非常に澄んでいて、独特の濃い青に見えます。冬の積雪量は全米でも指折りです。
- オリンピック国立公園(ワシントン)— 温帯雨林、海岸、氷河の山が一つの公園に同居しているという珍しい場所です。 カメラがどこを向いているかで、まったく違う土地に見えます。
- アカディア国立公園(メイン)— アメリカ本土でいちばん東にある一帯で、大西洋に面した岩の海岸が特徴です。 このサイトで最も日本との時差が小さい海外カメラでもあります。
乾いた土地のカメラ
- グランドキャニオン(アリゾナ)— 視程の観測地としてよく知られた場所です。 空気が澄んだ日には対岸の壁の細かい起伏まで見え、霞んだ日にはのっぺり平坦に見えます。 その差がはっきり出るので、大気の状態を見るには格好の被写体です。
- ジョシュアツリー国立公園(カリフォルニア)— 性質の違う2つの砂漠が接する場所で、奇妙な形の木と丸い岩が並びます。 昼と夜の気温差が大きく、日が落ちると急速に冷えます。
間欠泉と火山
オールド・フェイスフル間欠泉(ワイオミング)は、 12台の中でいちばん「当たり外れ」がはっきりしたカメラです。 この間欠泉はおよそ90分前後の間隔で噴き上がります。 間隔は一定ではありませんが、規則性があることから 「Old Faithful(律儀なやつ)」という名前がついています。
つまり開いた瞬間に噴いている確率は低く、しばらく待てば当たるカメラです。 噴き上がりは数分続くので、タブを開いたまま放っておくのが正解かもしれません。
そして、このサイトに載せている110台のうち 動画を流しているのはこの1台だけです。 イエローストーンの公式ページにも、10台あるカメラのうち動画配信はここだけだと書かれています。 しかもこのカメラは公園の予算ではなく、キヤノンUSAからの寄付で維持されています。 待てば噴くカメラを動画で見せるには、それだけの費用がかかるということです。 残りの11台は、他の機関のカメラと同じく静止画です。
ハワイ火山国立公園(ハワイ島)は、 キラウエアとマウナロアという2つの活火山を含む世界遺産の公園です。 火山活動の状況によって見えるものが変わるので、他の公園とは性質が違います。 同じ島の火山を観測目的で映しているカメラについては、 火山カメラの記事のほうに書きました。
見るなら日本時間の深夜
12台はアラスカから東海岸まで散っていて、日本との時差は13時間から19時間あります。 まとめて明るいのは日本時間の深夜0時から4時ごろです。 日本の夜8時から10時ごろだと、西側の公園が朝を迎えたあたりになります。
なお、冬季に道路が閉鎖される公園では、カメラの保守ができずに止まることがあります。 このサイトに載せるにあたっては、画像がきちんと更新され続けているかを一台ずつ確認し、 数か月止まったままのものは外しました。それでも、季節や整備の都合で一時的に止まることはあります。
国立公園のカメラは、観光地の絶景カメラとしては期待外れかもしれません。 ただ、「これは記録のための装置だ」と思って見ると、 何でもない尾根が今日はどこまで見えているか、という見方ができるようになります。